日蓮上人が今の山梨県石和のあたりを通りかかり、鵜使いの亡霊に出会ってこれを済度したという霊験物語。行き暮れて辻堂に泊まる上人のところへ老人があらわれ、身の上話の末に鵜使いの亡霊とわかる。上人は鵜を使って見せよと望み、老人は巧みに鮎を取って見せるうち、月の出とともに消え去る。ここを鵜の段と申して前半最高の見せ場になっている。
間狂言の所の者の物語に、上人が跡を弔っていると、閻魔大王が現れ、鵜使いを極楽に送ったことを告げて法華経の功徳をたたえる。季節的にも、動きのある点でも薪能向きの名曲とも申せましょう。
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