地謡・囃子方がつくと、都人が登場、竹取物語のある筋を語る。警護の武者が登場し、帝の命により今夜姫の昇天を防ぐことを告げ、東の空が「月しろ」になるのを見て急ぎ去る。笛一管のアシライ「音取(ねとり)」で姫が登場。続く地謡で竹の露のごとく生まれ、翁夫婦に育てられた恩愛を述べる。
月の世界に帰る日の近いことを嘆き「翔(かけり)でその苦しみを舞い、なおも帝を始めとする幾人もの求愛を退け、使者の訪れの近いことを予感させる「来序(らいじょ)」の囃子によって、いよいよ使者が現れる。
この間にシテは装束を改め(物着)、地上の人々に対する報恩と別離の舞を舞い、最後に月のしづくの輝く玉となって真澄の空へ消えていく。
戦前唯一の女性(玄人)能楽師、津村紀三子(1902〜1974)作。美しい、叙情的な新作能です。
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