琵琶の名手である藤原師長(主ツレ)は奥義を極めんと入唐渡天を志し都を旅立つ。途中須磨の浦に立ち寄り月を眺めて居ると老人夫婦(前シテ・ツレ)が潮汲みに来たので声を掛け塩屋を借りる。
老人夫婦は師長一行と聞くと琵琶を所望し、師長は請われるままに琵琶を弾きならすが突然の村雨に興を削がれ演奏を止める。すると二人は苫を塩屋の屋根に敷き雨音と琵琶の調子を揃えたので一行は老人に琵琶を弾かせる。最初は固辞していた老人が姥の琴と共に演奏を始めるとその素晴らしさに師長は感動し、そのまま塩屋を立ち去ろうとする。老人夫婦が師長を引き留めると師長は己の慢心を恥じ、二人の名を尋ねる。すると尉は名器「玄象」の持ち主村上天皇、姥は梨壺女御と名乗り消え失せる。
夜もすがら師長が待っていると村上天皇が在りし日の姿で海上に現れ、昔玄象と共に唐より送られながら竜宮に奪われた「獅子丸」を龍神(後ツレ)に命じて取り寄せ、それを師長に与えて夜明けと共に去る。
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