烏江の野邊(うごうののべ)草刈り男達が通りかかった舟に便乗して対岸に渡ると、船頭は船賃として男達が摘んだ草花の中から美人草を所望した。 男達がそのわけを尋ねると、船頭は項羽の后虞美人の塚から生えた花だから美人草だと答え、その謂われや虞美人の最後な様子などを語り我こそ項羽の亡霊と言い残して消え失せる。 草刈り達が項羽の跡を弔っていると項羽が虞美人を伴って現れ、漢の高祖に攻め滅ぼされ城壁より身を投げた有様を目の当たりに見せて消え失せる。 「史記」を題材とする、世阿弥作の能です。
「鉾」を使う数少ない曲の一つ。前シテの船頭の老人を如何にして、項羽とダブらせるかが工夫のしどころ。 勇猛果敢な猛将が花を所望するような不似合いな描写を上手く演じていきたい。「語り」から地謡の中入までをダレさせずにもっていけるかがキーポイントです。