上野国佐野で雪に悩む旅僧が、茅屋に宿を借りようとする。留守居の妻は夫を迎えに出、その旨を告げる。夫はにべもなく断ったが、妻のすすめに雪中を追って連れ戻し、粟飯をすすめ秘蔵の鉢木を火に焚いてもてなす。 感じた僧が名を尋ねると佐野源左衛門尉常世と名乗り、具足・長刀・馬を示して落ちぶれても武士の心意気を示す。 やがて関八州に動員令が下り、鎌倉に馳せつけた常世は思いがけず執権の前に引出される。執権北条時頼こそあの夜の旅僧であった。面目を施し褒美を与えられた常世は意気揚々と故郷に帰る。
観世流の現行曲の中で最も長い文章の曲。しかも似た文句が多く、間違えずに一曲を演じきるのが一苦労!能の中でも極端に芝居がかっており「この能、能にあらず」の例えがある。 ワキ方の重い習いになっていて、 直面(能面を掛けない)のため汗かきのシテには一寸気が重い曲。