旅僧、須磨の浦で短冊の付いた松を見、所の者に謂れを尋ねる。ここに流罪になっていた中納言行平(在原業平の兄)の愛人、松風・村雨姉妹の跡と知って弔っていると日が暮れ、海女の塩屋に宿を借りようとする。
二人の海女は汐を汲み、車に乗せて帰って来る。宿を一旦は断ったものの、僧と知って泊める。松風村雨の話に涙する姉妹に不審する僧に、二人はその亡霊と明かし、行平への思慕を綿々と訴え、はては形見の衣を纏って松を巡って狂い舞う。
弔いを頼み消え失せる二人、僧が目覚めればその声と思ったのは松風の音であった。
「熊野に松風米の飯」とうたわれる、名曲中の名曲。 中納言行平物語の「松風村雨を友とし」の一句から、この大ロマンを描き出した謡曲作者の筆力に敬服します。
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