諸国を巡り歩いている旅僧(ワキ)は京都の寺社を全て拝み終えた為、奈良へ向かった。その途中、僧は宇治の里でひとりの老翁(前シテ)に出会い、宇治の名所旧跡を教わる。その後、老翁は僧を平等院へ案内し、庭園にある扇の芝を指し示して源頼政自刃の場所だと語る。さらに老翁は、今日が命日だと僧に教えた後、自身が頼政の霊だと告げ、消え失せる。(中入)僧が奇特に思い弔っていると、甲冑姿の頼政の霊(後シテ)が現れる。頼政は、治承四年の夏、高倉の宮を奉じて平家討伐を謀るも失敗した事や、追いやられた宇治川での戦いについて語る。そして宇治川の激流をものともせず、騎馬で攻め寄せた平家に敗れ、辞世の一首を残して自害した事を話す。やがて頼政は僧に回向を頼み、扇の芝の草陰に消えゆくのであった。
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