能 頼政 (よりまさ)



あらすじ

 諸国を巡り歩いている旅僧(ワキ)は京都の寺社を全て拝み終えた為、奈良へ向かった。その途中、僧は宇治の里でひとりの老翁(前シテ)に出会い、宇治の名所旧跡を教わる。その後、老翁は僧を平等院へ案内し、庭園にある扇の芝を指し示して源頼政自刃の場所だと語る。さらに老翁は、今日が命日だと僧に教えた後、自身が頼政の霊だと告げ、消え失せる。(中入)僧が奇特に思い弔っていると、甲冑姿の頼政の霊(後シテ)が現れる。頼政は、治承四年の夏、高倉の宮を奉じて平家討伐を謀るも失敗した事や、追いやられた宇治川での戦いについて語る。そして宇治川の激流をものともせず、騎馬で攻め寄せた平家に敗れ、辞世の一首を残して自害した事を話す。やがて頼政は僧に回向を頼み、扇の芝の草陰に消えゆくのであった。

 
演者から一言

 歌人としても、弓の名手としても名高い源三位頼政が主人公であり、「朝長」「実盛」とともに三修羅と呼ばれる名曲のひとつです。
 平等院の「扇の芝」を舞台とし、老武者の戦場での振る舞いが見どころとなっております。 前半部分は、宇治の里の名所旧跡の抒情的な優美さや、扇ノ芝のいわれが語られます。 後半部分は、在りし日の甲冑姿の頼政が現れ、宇治川の戦いを仕方話に語り示す場面が一番の見どころとなっております。ずっと床几に腰かけたまま、手振りと左右の動きで戦物語をする様は卓越した技が必要です。
 老武者の奮戦と、散り様をありありと示した名曲をぜひご覧ください。


↑に戻る HOME(検索でお越しの方はこちらからtopにどうぞ)