能を楽しむ
−静寂の中に現世の身を沈めひととき幽玄の世界に遊ぶ−
山懐に抱かれた古都鎌倉には厳かな能の雰囲気がよく似合う。気軽に楽しめる公演も多い。鎌倉在住の能楽師・中森貫太さんに案内していただき、鎌倉能の世界に触れてみよう。
鎌倉には多彩な能の楽しみ方がある。秋に行われる鎌倉宮の薪能に陶酔したり、長谷にある鎌倉能舞台で行われる定期公演を見て能に親しむのもいい。
鎌倉薪能は、全国に広がる薪能人気の火付け役となったもので、昭和34年に始まり、今年で47回を数える。金春流、狂言方大蔵流、観世流、喜多流などが参加する豪華な組み合わせだ。今では鎌倉の秋の風物詩となっている。
能楽師の中森貫太さんは能の入門として薪能を推奨する。
「野外の能舞台には、虫の音やあたりのざわめきなど、様々な音が入り込み、それが能独特の過度の緊張を解してくれます。また、薪能の演目には動きの派手なものが選ばれることが多く、能になじみの薄い人にも楽しめるでしょう」
月明かりのもと、篝火の炎が揺れるなかに浮かび上がる能面、能装束。聞こえてくる笛の音、鼓の音色。薪能は幻想的な能の世界へ誘ってくれる。
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