(舞台上の扇の使い方例の画像はこちらにあります。)
今回は舞台の上での扇の使い方について話していきましょう。
扇は普段は右手に持ちます。持ち方は小指と薬指を主にして、後の指は形よく添えるようにします。親指に力を入れて持つと扇の先が下に向いたり、先が震えたりします。
鎮折と中啓では扇の仕立てが違いますので、持ち方も若干違います。 鎮折は扇の骨から親指を外して人差し指の先に会わせて、左手と同じ形になるように持ちます。中啓は親骨に親指を乗せて、扇が立つように持ちます。いずれも顔の前に扇を出した時に、扇の先が少し斜めになるようにします。
象徴的な表現方法として、次のような他の道具に見立てて使う事があります。
1:筆 扇を逆にして指先を伸ばすと筆になります。「放下僧」の「筆に書くとも及ばじ〜」等の型です。
2:刀 扇を骨2本まで閉じて親指と人差し指の股で握って持ちます。能の時は作り物の太刀を使いますが、仕舞の時は扇で表現します。
3:弓 左手で扇の真ん中ほどを握ります。左手は指先を伸ばして矢をつがえた型にします。「殺生石」や「鵺」にあります。
4:盃 右手で扇を開いて水平に持ち左手を伸ばして添えます。この型は相手に物を差し出すときにも使います。左手で地紙を一つ畳んで持つ型もあります。
5:盾 左手で親骨を一つ畳んで持ち扇を顔の前に立てます。「屋島」の「陸には波の盾」の型が有名です。
この他にも”合図”の”知らせ”のような使い方もあります。
「融」の「舞返(まいがえし)」や「十三段之舞」等の小書(特殊演出)の時、舞の途中でシテが囃子方の方を向いて扇に手を掛けます。普段は扇を開いてその段で舞を終わりにしますが、ここで扇を閉じると「もう一度最初から舞いますよ!」の合図になり、番組に書かれていなくても「舞返」の演出になります。(もっとも最近では囃子方がまず承知してくれませんので、必ず事前に言いますが)。
今度能を御覧になるときには扇にも気を付けて見て下さい。
扇の使い方の基本は「目線と扇の先と出ている足のつま先は同じ方を向く」と言うことです。お稽古を始めたばかりの方などが自分の舞台写真を見てどこか違和感がある時はたいていこの基本が守られていないことが多いようです。
(ただしこれを読んで自分の先生に質問などはしないでくださいね。先生によって教え方の表現方法は違いますから!)
|